20kmほど走行して、信号待ちでPレンジにしたらエンストしたという平成18年式クラウン(GRS180、4GR-FSE)
同業者からの依頼。
エンストした時はメーターのランプ類は不灯でキーOFF状態だったという。
また、キーON状態にもならず、クランキングもできなかったという。
しかし、Nレンジにすると始動でき走行もできたが、Pレンジにするとやはりエンストしたという。
そのまま行きつけの整備工場に乗って行ったのだが、その時はやはりPレンジにするとエンストし再始動はできなかったようである。
また、ユーザーさんの言うようにNレンジにするとエンジンはかかったという。
しかし、翌日からは不具合が出なくなったということで依頼を受けた。
不具合現象が出ないと難しいのだが一通り調べることにした。
まず、ダイアグノーシスを調べると、エンジンはP1603(エンスト)、P1605(アイドル不安定)、ATはP0500(車速信号系)、P0705(T/M選択スイッチ)を記憶していた。
他のABS、SRS、ボデーシステムは正常コードだった。
特にヒントになるようなものはなかった。
Pレンジにするとエンスト。。
全く想像がつかない。
唯一の可能性としては、Pレンジにしたときに、シフトレバーの動きによりハーネスが一緒に動き、何かの配線が断線かショートするということ。
しかし、これもかなり無理のある推理である。
とは言うものの、とりあえず点検することにした。
リフトアップし、シフトレバーを動かした時に連動して動くハーネスがないか調べたが全くなかった。
念のためシフトレバー近辺のハーネスをゆすったが不具合は発生しなかった。
Pレンジとは関係ないが、トヨタ直噴エンジンでは燃圧センサのVcショートによるエンストや始動不能は多数経験しているので調べてみた。
アイドル状態でVc端子をショートさせるとエンストしたがメーター内の警告灯は点灯していた。
キーONと同じ状態である。
それにエンジンはかからないがクランキングはできる。
ユーザーさんの言う症状にはならなかった。
再度、依頼者に詳しく話を聞くとこにした。
すると、以前、冷機時のみシフトアップしなかったり、DレンジなのにRとDの両方のランプが点灯したことあったという。
暖気後は変速も行われ、表示も正常になったという。
シフトアップしなかった。
RとDの両方のランプが点灯。
P0705(T/M選択スイッチ)
全てニュートラルスタートスイッチに関係があると思われるので、コネクタを外して点検することにした。
するとドロでかなり汚れていた。
この部分でRレンジとDレンジの端子がショートすると、RとDの両方のランプが点灯し、フェイルによりシフトアップもしない。当然、P0705(T/M選択スイッチ)を表示する。
よって、これらはこの部分が原因と思われるが、Pレンジにするとエンスト、メーター不灯、キーON及びクランキングできない原因とは結びつかない。
もしかして、知らないフェイルや制御があるかもしれないと思い、強制的にRレンジとDレンジの端子をショートさせたがエンストもしなかったし、キーOFF後のクランキングもできた。
もしかしたら、違う端子のショートだったのかもしれないが、その確認はできなかった。
これ以上の点検はできないと判断し、ニュートラルスイッチの交換とコネクタ内の清掃で納車することにした。
エンスト及び始動不能の原因は断定できないままだった。