2速発進時や3速にシフトアップしてアクセルペダルを踏み込むと失速するという平成9年式サンバ(KV4、EN07)
症状からは点火系か燃料ポンプ系が疑われるのだが、この車は同業者からの依頼であり、すでに可能性の高い燃料ポンプ、ポンプリレー、燃料フィルタ、プラグコード、プラグ、IGコイル、イグナイタは交換済みである。(燃料ポンプ、IGコイル、イグナイタは中古)
まずは症状の確認からということで試乗してみると確かに失速する。(アクセルペダルを踏んでいるのにエンジン回転は上がらない)
感じとしてはIGコイルの容量不足か燃圧不足といった感じである。
プラグコードを抜いて10mmのギャップで火花を飛ばしたが強い火花が飛んでいた。
これで単純に点火系は良いとは言えないが、後回しにして燃圧を点検することにした。
燃圧計をセットしてエンジンをかけると1.7~1.8kg/cm2しかなかった。
(時にはアイドリングでも1.4~1.5kg/cm2しかないときもあり)
明らかに低いようだ。
レーシングすると2.5kg/cm2近くまで上がるが、急レーシングするとみる見る間に低下し、0.4kg/cm2近くまで低下して、その後上昇した。(燃圧は低下するが、走行しないと失速状態にはならない)
明らかに燃圧系の不良である。
(燃料ポンプから異音がしており、入庫時から疑っていた)
ただし、燃料系は燃料ポンプ、ポンプリレー、燃料フィルタを交換している。
燃料ポンプは中古とはいえ、かなり新しいような感じがするし、交換しても症状が変わらないという。
とはいえ、プログレの件もあるし中古の場合は疑わないといけない。
ただ、この不具合は少し変わっていて、かなり走行しないと不具合が発生しないという。
依頼者の話では、20kmくらい走行すると不具合が発生し、一旦発生するとずっと続くという。
また、一旦、エンジンを止めると、止めた時間に比例して不具合が発生しなくなるという。
ということは、単純に燃料ポンプの不良とは言えない。
考えられるのは燃料タンク内が負圧になっているか、もしくは燃料タンク内のストレーナの詰りである。
まずは燃料タンクのキャップを開けてレーシングすると燃圧は低下した。
ということは、燃料タンク内が負圧になっての不具合ではなそうである。
ストレーナの詰りだろうということで、燃料タンクを降ろすことにした。
燃料タンクを外してフューエル・センダ・ゲージを外すと錆びだらけ。
この分ではタンク内の錆びも十分考えられる。
タンク内の燃料を吸い出すと、ピンクというより茶色っぽい。
最後の方の燃料を白いトレイに出すとかなりの錆びがあった。
当然、タンク内には多くの錆びがあった。
(黒く見えるのはすべて錆。金属自体がさびている個所もあるが、大部分は錆が砂状になって浮遊している。)
タンク内のストレーナは見ることも取ることもできなかったが、エンジンがかかってる間は、この錆がストレーナに詰まっていき、そのうちに燃料不足になるものと思われる。
エンジンを止めると、これらの錆が徐々に落下していき、再始動後はしばらくは問題なく走行できるものと思われる。
燃料タンク(中古)を交換し、新品の燃料フィルタからも多量の錆が出てきたので再度交換した。
交換後は、アイドリングで2.4kg/cm2、レーシングで最大2.9kg/cm2まで上がるようになった。