回転を上げていくと4000回転くらいからハンチング(2500⇔4000回転)するという平成20年式ハイゼット(S331V、KF)。
後輩が点検しており、途中から手伝ったもの。
症状を確認すると、綺麗な?ハンチング。
感じとしては制御によるものと思われた。
通常、ハンチングというと、燃料カットによるものが多く、減速時の燃料カット、高回転、高速度、過給圧によるものが一般的である。
本当に燃料カットかを確認するためにインジェクタの作動音を聞いたが、エンジン回転が高すぎるせいか聞きにくくとても断定できない。
インジェクタの駆動波形を確認したが、仮に燃料カットだとした場合、噴射時間が短くなるのは何十回に数回だけであり、なかなか捕えられない。
点火やインジェクタが間引かれているかと思って調べたが、それぞれの信号の間隔が長い時があるが、間引かれているのか回転が下がるので間隔が長くなるのかが断定できない。
減速時の燃料カットにしては回転が高すぎるので違うと思ったが、スロットルセンサーの出力電圧を点検してみた。
これがアイドル時のままの電圧であれば回転を上げたときにハンチングが起こるのだが、点検した結果、問題なかった。
念のためスロットルセンサーのコネクタを抜いてみたが変化なかった。
減速時の燃料カットではなかった。
停車状態でも不具合が出るので高速時の燃料カットは考えにくい。
ノンターボなので過給圧による燃料カットは有り得ない。
高回転時の燃料カットだが、クランク角センサーにノイズが乗っている可能性もある。
また、こんなわけのわからないトラブルで行き詰った時は、エンジンの回転センサー、インジェクタ、点火指示信号を調べるに限る。
ただ、インジェクタと点火指示信号は点検済みであり悪いところは発見できなかった。
回転センサーであるクランク角センサーとカム角センサーの信号を調べることにした。
ハンチングが始まった時の波形を停止してみた。
※波形を紛失
「ん?おかしい・・・」
共にピックアップコイル式なので交流波形が出ているのだが、カム角センサーのピーク・ツー・ピークは6Vくらいあるのに、クランク角センサーは1.5Vくらいしかない。(ただし、欠歯部のとこだけは6Vくらいある)
4000回転近くまで上がってるのに、1.5Vは有り得ない。
アイドリングにして波形を停止すると、カム角センサーは2V、クランク角センサーは1.3Vしかない。
クランク角センサーの電圧はアイドリングも4000回転もあまりかわらないのである。
通常、ピックアップコイル式のセンサーでは有り得ないことである。
原因はセンサー自体かもしくはエアギャップしかないので、クランク角センサーの取付状態を調べた
すると、センサーが少し浮き上がっているように思えた。
外してみると、Oリングに傷が入っており、センサー自体も反っていた。
取り付けボルトはしっかり締め付けられていたが、Oリングが噛んでいたのでセンサーは浮き上がっていたようである。
結果的にエアギャップが過大になっていたのである。
Oリングを交換しセンサーをきちんと取り付けると正常に戻った。
また、クランク角センサーはアイドリング時でも2Vを超える電圧を出力するようになった。
原因は分かったが、不具合が発生したメカニズムが分からない。
なぜ、エアギャップが大きくなるとハンチングが起こるのか?
なぜ、4000回転までは問題ないのか?
回転の上昇と共にクランク角センサーのしきい値が変化するのか?
そもそも燃料カットなのか、インジェクタまたは点火の間引きなのかもわからないままであった。