クランキングはできるがエンジンがかからないという平成11年式デュトロ(XZU321T、S05D)。
ただし、バックギヤにすると始動ができるという不思議なトラブルです。
バックにすると何故かかるのでしょうか?
それを推理するには、バックにした時にどういった電気の回路ができるかを知る必要があります。
バックギヤにすると、ECU-IGのヒューズからの電源は、A14のバックアップランプスイッチがONし、ダイオードを経由してECUのB13番端子(FSW)に入力されます。
また、同時にA42のシフトポジションスイッチもONし、メーンリレーの接点経由でE/Gヒューズからの電源が供給されます。
シフトポジションスイッチは1速でもONするようです。
つまりバックでは2つのスイッチから同時にECUのB13番端子に電源が供給されます。(バックスイッチからの信号は不要のような気がしますが・・・・)
電源が供給されるといっても、この電圧が何かを作動させるわけではなく、ただ単にシフト位置の検出信号であって、12Vだとバックまたは1速と判断し、それに見合った制御を行うだけです。
ということは、バックアップランプスイッチまたはシフトポジションスイッチが接触不良だろうが、ONしっぱなしだろうが、エンジンがかかるかどうかには影響を与えません。
スイッチ類は関係ないということです。
となると、考えられるのは電気の回り込みです。
本来、バックアップランプがあり、バックアップランプのアースが浮くと回り込みが発生しますので、その可能性を考える必要がありますが、今回はその回路を載せていませんので考える必要はありません。
次に考えられるのは、2つのバック信号のうち、どちらかの信号電圧がもう一方のスイッチ側に回り込む場合です。
しかし、シフトポジションスイッチの信号がバックアップランプスイッチ側に回りこむことはありません。
それは、ダイオードがあるからです。
仮にこのダイオードがショートしていても1速でバックランプが点灯するだけです。
バックの時は、そもそもバックアップランプスイッチがONしているので、なんら関係ありません。
残るはバックアップランプスイッチの信号電圧がECUのB13番端子を経由してシフトポジションスイッチ側に回り込んだ場合です。
この場合、ECU-IGヒューズの電圧は、バックアップランプスイッチ→ダイオード→ECU13番端子→シフトポジションスイッチ→MAINリレー接点と流れます。
ん?MAINリレー接点?
仮にMAINリレーが不良の場合、SPIL VLVリレーに電源が供給されず、インジェクタドライバーに電源が供給されません。
つまりスピルバルブ(燃料噴射量を制御する物)が作動しないのでエンジンはかかりません。
しかし、バックにすると先ほどの経路をたどり、MAINリレーのコイルと接点に電源が供給されエンジンはかかります。
ということで、今回の正解はMAINリレー不良です。
本来はMAINリレーからSPIL VLVリレーに電源が供給されます。(赤線)
しかし、MAINリレー不良の場合、エンジンはかかりませんが、Rレンジにするとバックアップランプスイッチ側から電源が供給されますのでエンジンがかかります。(黄線)
MAINリレー接点以降の配線が断線でも同じことが言えますが、今回は部品と限定していますのでMAINリレーとなります。
実際は、MAINリレーをONさせる条件であるIG S/W ON信号は、IG2リレー経由でECUに入力されていますので、IG2リレー不良の可能性もあるのですが、今回の問題としては複雑になるので省いています。
もし、これと同じトラブルがあった場合、MAINリレーとIG2リレーの不良または、それらに関する配線の不良が考えられます。
今回は、doy*e*000さん、三流セルフメンテナンスさん、半熟整備士さん、mir**ru25さん、bm*****さん、LEOさん、GARAGETSUBAKIIさんが正解でした。
中でも、doy*e*000さんはシフトポジションスイッチの作動を説明しない時に正解ということでお見事です。