走行中にエンジンが吹き上がらなくことがあるという平成20年式プロボックス(NCP50V、2NZ)
症状から燃料系が疑われたので、燃圧計とスキャンツールをセットし試乗に出かけた。
データーはスロットル開度、エンジン回転、それに空燃比フィードバックに関係する項目。
走行中に不具合は感じなかったが、信号待ちで停車するとアイドル不調になった。
燃圧計は問題なかったが、O2センサーの電圧が1Vを越えており、A/F(空燃比)学習値と補正値がそれぞれ、大きくマイナスになっていた。
その状態でゆっくり加速していくと、エンジン回転はほとんど上がらずに、ユーザーの言う症状が現れた。
更にアクセルペダルを踏み続けると突然エンジンが吹き上がった。
データーモニタを保存し工場に戻った。
その間も何度も同じような症状になった。
不具合が出ている時のデーターを見ると、O2センサーの電圧は1.275Vと異常な数値になっていた。
前回の記事にも書いたが、O2センサーの電圧が1Vを超えた時点でアウトである。(A/Fセンサーや冷機時のホンダのO2センサーは除く)
この異常なリッチ(濃い)信号により、A/F学習値は-17.2%、補正値は-20.3%とトータル37.5%もの減量を行っている。
これでは燃料不足で吹き上がらないのも当然である。
これが本当に濃すぎで吹き上がらないのであれば、減量することにより吹き上がるはず。(補正値の限度まで減量しているのであれば吹き上がらないかもしれないが限度が-17.2%という事はない。まだ減量する余裕があるはず。)
データーを見ると、図中の赤線まではスロットル開度はアイドル状態からが64%すぎまでゆっくり大きくなっている。これはアクセルペダルをゆっくり踏み込んでいるからである。
それなのにエンジン回転はアイドル回転から2000回転弱までは上がってるが、それからほとんど変化していない。
ここがユーザーの訴える症状である。(緑丸)
なぜ、こんなことが起こるのかというと、O2センサーの電圧はずっと1.275V(グラフの上限値を超えているのでグラフには見えない。最後にちょっとだけ見えている。(赤丸内)
1Vを超えているという事はオーバーリッチ(濃過ぎ)なので、A/F学習値は-17.2と減量。(少しの間だけ0%近い時もある。)
A/F補正値も-20.3%と減量している。
しかし、赤線のところまでアクセルペダルを踏み込むと、出力増量が働いたと思われ、それまでのCLOSE制御(O2センサーを使った空燃比フィードバック制御)からOPEN制御(制御停止)に変わったと同時に、学習値は0%近くになり、補正値は0%になっている。
すると減量が無くなったのでエンジン回転は急激に上がっている。
このことからもO2センサーの不良に間違いない。
(本当に濃すぎで吹き上がらないのであれば、OPEN制御でも吹き上がらないはず。)
つまり、原因は前回の記事と同じである。
ちなみにプロボックスのO2センサーはトヨタ車なのにどういうわけかN○K製である。(トヨタ車は圧倒的にデンソー製が多い。)
そしてなぜだかこの手のトラブルはN○K製が多いと感じるのはたまたまであろうか。
なお、O2センサーが原因と思われる場合は、O2センサーのコネクタを抜けば症状が現れなくなるので、それでO2センサー不良と判断出来なくもない。(頻繁に症状が出る車に限る。)