考えられるところは点検し、どこにも悪いと思えるところがなかった。
こういった時は基本に戻るに限る。
現象確認のため、いろいろなパターンで試してみた。
すると次の2つのことが新たにわかった。
1つは、コンプレッサーがONし、アイドル回転が650回転を下回るとOFFするということ。
もう一つは、Dレンジの状態からエアコンをONにすると、不具合が出ることは少ないという事である。
逆に、先にエアコンをONにし、それからDレンジにすると、ほぼ必ずと言っていいほど不具合が出るのである。
これは何を意味するのか?
コンプレッサーの負荷の大きさとA/Tに負荷の大きさの違いなのか、もしくはアイドルアップ機能の違いなのかは分からないが、どちらかというと制御の問題に思えた。
どういう事かというと、今の車はほとんどがアイドル回転をECUが制御しており、通常、アイドル回転制御システムと呼ばれている。
単純にアイドル回転をECUが制御しているのだが、実際はその制御は細かく分かれている。
具体的には、始動制御、暖機時制御、見込み制御、電気負荷アイドルアップ制御、フィードバック制御等である。
このようにアイドル回転制御は細かく分かれているのだが、一般的にDレンジにした時やエアコンON時は、それぞれの負荷によるエンジン回転の低下を見越して、回転が低下する前にそれを補うような見込み制御を行い、その後、目標の回転数になるようにフィードバック制御を行う。
しかし、見込み制御も全ての負荷で行われているわけではない。
一般的には、Dレンジへのシフト時とエアコンON時で、その補正量は違うはずである。
ということで、この制御の違いを確認するためにデータモニターの項目を見ると、ISC制御用スロットル開度という信号が目に入った。
この数値がISC制御の量と関係がありそうである。
通常、アイドル回転制御はISCVが行っているが、このエンジンは電スロであり、ISCVは無い。
しかし、そのアイドルアップ分のスロットル開度をこの信号で表しているのではないかと考えた。
試しに、エアコンOFF状態でDレンジにしてみた。
すると、NレンジからDレンジにした瞬間、このISC制御用スロットル開度は大きくなった。
つまり、アイドルアップさせようとしたようである。
次に、Nレンジに戻してエアコンをONにした。
すると、こちらもISC制御用スロットル開度信号は大きくなった。
この信号がアイドルアップに関する間違いなさそうである。
※ A/CコンプレッサークラッチはA/Cスイッチの信号ではな
く、マグネットクラッチリレーをONさせる信号である。
- よって、A/CスイッチがONになった瞬間に、ISC制御用スロットル開度信号は大きくなり、一瞬遅れてA/Cコンプレッサークラッチ信号がONになっている。(わざと一瞬遅らせることにより、見込制御で回転を上げてからコンプレッサー負荷で回転が目標近くに下がる。)
なのに、なぜ、エアコンON状態でDレンジにすると回転は落ち込むのか?
いろいろなパターンを試してみると、おかしなことが起こっていることに気が付いた。
それは、エアコンをON状態でDレンジにすると、何故だかわからないがISC制御用スロットル開度信号は小さくなり、それから少し大きくなったのである。
そして、コンプレッサーのON/OFFのハンチングが起こった。
なんでA/CスイッチをONにしたのにISC制御用スロットル開度は小さくなった?
なんで、見込制御や電気負荷制御は働かないの?
A/CスイッチOFF状態でDレンジにすると、ISC制御用スロットル開度は大きくなるのに、なぜ、A/CスイッチON状態でDレンジにすると小さくなるの?
訳が分からない???
つづく