知人から「フロントブレーキの制動力が0kgだけど何でだろう?」というクラウンハイブリッドの相談があった。
制動力が0kgなんてありえないと思ったが、ブレーキテストは間違いなく0kgだという。リヤはと聞くと300kgくらいはあるらしい。
テスタの不良でもなさそうなのでフロントは実際に0kgのようだ。
制動力は整備モードだろうが通常モードだろうが関係ないだろうとは思ったが念のため聞いてみた。すると、整備モードで測定しているということである。
フロントブレーキの制動力が0kgだとほとんどブレーキが効かなくて危なくないのかと聞くと、スピードを出していないせいかそれは感じなかったようだ。
関係ないだろうが通常モードで測定してみるようアドバイスしておいた。
その間資料で調べることにした。
すると、ブレーキの注意事項の中に「ブレーキテスター使用時の注意」に次のような記述があった。
「ブレーキテスタでの検査時に後輪の制動力が低下する可能性がある。これは、この車両のブレーキシステムが、消費電力低減のために、車速 0km/h のときの後輪ブレーキの油圧を走行状態の約50%に制限するためである。」
こんな制御をしているとは思わなかった。
ブレーキテスタで制動力を測定するときは車速 0km/hと判断して、油圧の制限をしている可能性がある。
しかし、フロントブレーキに関しては何も記載がない。
どうしたものかと思いながらいろいろと調べてみると、ファイネスの技術情報の項目に「トヨタ ハイブリッド車における制動力試験時の留意事項(2010/01)」というものがあることに気が付いた。
内容は修理書の内容の訂正を表すもので、当初は制動力測定時は整備モードでも通常モードでもどちらでもいいと書いていたが、通常モードで測定するように訂正されていた。
修理書をもう一度見直すと、総説の「注意事項」の中の「車両検査時の留意事項」では制動力は通常モードで測定するようになっていた。
検査時の整備モードおよびシフト位置 | ||
検査項目 | 整備モード | シフト位置 |
(1) 自動車直進性能試験(サイドスリップ) | 整備モードまたは通常状態 | Dポジション |
(2) 制動力試験 | 通常状態 | Nポジション |
(3) 速度計試験 | 整備モード | Dポジション |
(4) 排出ガス試験(アイドリング) | 整備モード | Pポジション |
(5) 前照灯試験 | 整備モードまたは通常状態 | Pポジション |
なぜ整備モードにするとフロントブレーキの制動力が0kgになるのかは不明だが、0kgになるので整備モードではなく通常モードで測定するように訂正されたのではないだろうか。
そうこうしていうちに相談者から電話があり、通常モードで測定すると制動力が出たそうである。
技術情報ではクラウンハイブリッドだけではなくクルーガー、ハリアー、エスティマ、レクサスでも同様に通常モードで測定するようになっていた。
『追加』 対象車種
クルーガーハイブリッド(DAA-MHU28W)
ハリアーハイブリッド(DAA-MHU38W)
GS450h(DAA-GWS191)
エスティマハイブリッド(DAA-AHR20W)
クラウンハイブリッド (DAA-GWS204)
RX450h (DAA-GYL10W,DAA-GYL15W,DAA-GYL16W)
ハリアーハイブリッド(DAA-MHU38W)
GS450h(DAA-GWS191)
エスティマハイブリッド(DAA-AHR20W)
クラウンハイブリッド (DAA-GWS204)
RX450h (DAA-GYL10W,DAA-GYL15W,DAA-GYL16W)