Dレンジで停車中、クリープ力が弱く、発進する際に一瞬ミッションが滑った感じがすることがあるというアリオン(NTZ240)。
同業者からの依頼で、中古だがミッションを2回(コンバータ付き)、中古のECUを1回交換済みである。
時々しか不具合がでないので、とりあえずはダイアグノーシスとライン圧を点検。
ともに正常だった。
しばらく試乗したが再現しなかった。
聞いた限りの症状からは次の3つのことが推定される。
1.ミッションの滑り。(機械的な摩耗、油圧低下)
2.3速または4速発進。
3.エンジンのトルク不足。
1の滑りについては、ミッションを2回も交換しており可能性は低いと思われる。
2についてはソレノイド(ミッション内)とECUを交換しておりこちらも可能性が低い。
もちろん、配線の可能性もあるが、その場合はダイアグでソレノイド系を表示するはず。
ダイアグは正常だったこともあり、こちらの可能性も低い。
3については充分に可能性はある。
この3つのうちどの系統に不具合があるのかを絞り込むには、不具合発生時のエンジン回転数がカギを握っている。
1の滑りであればエンジン回転はかなり上がっているはず。
2の3速または4速発進であればストール回転数(ブレーキを踏んでDレンジでアクセルペダル全開時の回転数)とほぼ同じ。
3の場合は、ストール回転より低いはず。
不具合発生時のエンジン回転を問診すると、1500回転くらいだったということである。
これはおかしい。
通常、ストール回転は2000回転以上あるのが一般的である。
よって、発進時もこの回転数に近いはず。
試しに、通常どおりの発進を行うと、2000回転を超えた。
ということは、③のエンジン側に原因があると予想される。
ただ、情報はまた聞きなのでこの1500回転ということの信ぴょう性がない。
一旦引き取ってもらい、不具合発生時の回転数を確認してもらうことにした。
しばらくしてその方と話す機会があったのでその後の様子を聞くと、エンジン側の可能性が高いと言われたので、社用車のプロボックスのエアフロメータと入れ替えいたそうである。
するとしばらくすると、プロボックスに同不具合が発生したというのである。
結局、原因はミッション側ではなくエンジン側のエアフロメータだったようである。(不良のエアフロはCマーク有だった)
故障診断の基本である、問診と現象確認がいかに大事だという事例であった。