エアコンを入れると、暫くは正常に働くが、そのうちに暖かい風しか出なくなるという、平成22年式ワゴンR(MH23S)
スキャンツールとゲージマニホールドで圧力等を測定しながら様子を見ていると、エバポレータのサーミスタ温度によって、マグネットクラッチはON/OFFを繰り返していたが、しばらくすると温度が上がったのにマグネットクラッチがONしなくなった。
マグネットクラッチの通電状態をサーキットテスタで調べると、約13Vと通電されていた。
マグネットクラッチの不良だろうと思い、エンジンを止めてマグネットクラッチの単体点検をしてみた。
すると予想に反して4.7Ωでありほぼ基準値(デンソー製は3.8~4.4Ω、カルソニックは3.2~4.4Ω)だった。
(基準値は20℃の時であり、測定時はかなりの高温)
※現車はデンソー製
点検のためにコネクタを外すのに時間がかかったので、その間によくなったのかもしれないと思い、再度、コネクタをつけてみた。
エンジンをかけると、コンプレッサーはONした。
やはり正常に戻ったようだ。
次に症状が出たら、すぐに単体点検が出来るようにしておいて様子をみた。
しかし、今度は症状が出ない。
熱負荷をかえたり、エンジン回転を変えたりすると症状が発生。
すぐにマグネットクラッチの単体点検をしたが、5.5Ωと断線していなかった。
おかしい。
マグネットクラッチは断線しておらず通電もある。
なのにマグネットクラッチはONしない。
あとは、マグネットクラッチのコネクタの接触不良しかない。
もちろん、マグネットクラッチ自体の機械的不良が考えられるが、構造上、考えにくい。
考えられるコネクタの接触不良ともう一つの可能性のあるマグネットクラッチのコイルの短時間の断線を調べるために、マグネットクラッチへの電圧と電流(クランプオン式)を調べることにした。
これなら、接触不良も短時間の断線も点検できる。
測定すると、マグネットクラッチがONしている時は13.8Vで4.5Aの電流が流れていた。
そして不具合が発生している時は、13.9Vで2A。
(マグネットクラッチの抵抗は、計算上では約7Ωで少し大きいような気もするが、かなり高温になっているので問題ないのではないかと思われる。)
電流が流れているという事は、コネクタの接触不良もないし、マグネットクラッチのコイルの断線もないという事になる。
(若干の接触不良も考えられなくもないが・・・)
なのにマグネットクラッチがONしないという事は、マグネットクラッチの不良に間違いない。
電流が減って磁力が減ることによりマグネットクラッチがONしないという事は、シャフト部の動きが重たいか、エアギャップが広いのかもしれない。
動きは分解しないとわからないのでまずはエアギャップを点検。
すると0.8mmだった。
マグネットクラッチのエアギャップは数十年ぶりの測定で、基準値なんか覚えていない。
調べると0.3~0.5mmだった。(カルソニックは0.25~0.45mm)
基準値をオーバーしていた。
これですべてがつながった。
原因はマグネットクラッチのエアギャップの過大である。
エンジン始動直後の、マグネットクラッチ温度が低い間は、抵抗値が小さく電流が大きいので、エアギャップが大きくてもマグネットクラッチはONするので症状が出ない。
これが、エンジン温度やコンプレッサー自体が高温になってくれば、当然、マグネットクラッチの抵抗が増えることで電流が低下する。
流れる電流が減れば磁力も減少する。
すると、エアギャップが過大のためマグネットクラッチはONしない。
これが今回の不具合発生のメカニズムだと思われる。
エアギャップ過大の原因は摩耗と思われる。
確か、エアギャップはシムにより調整できたと思われるが、それは新品の部品交換時であり、このように摩耗した場合はASSY交換が必要である。