レーシングでも1500回転くらいからもたついて、1800回転以上に吹き上がらないという平成12年式キャンター(FE53EB、4M51)
吹き上がらない状態では、灰色の煙を大量に吐いて排気臭もかなり異様であった
同業者からの依頼なのだが、実は依頼者の工場では昨年11月から預かっており、4か月が経過しようとしていたのである。
その間、2度ほどデーラーに預けて調べてもらって、様々な部品を交換したようだが、デーラーもお手上げということである。
どうにかしてほしいと頼まれたのだが、そんな車を持ってこられても困るんですが・・・・・と、断りたかったが、とりあえず話を聞くと、色々な部品を交換しており、特に、噴射ポンプとECUは交換しているので、何とかなるかもしれないと思い預かることにした。
これまでの作業内容は、わかっているだけでも、噴射ポンプ(リビルト品)、ECU(中古&新品)、ミッション(リビルト品)、クランク角センサー、燃料フィルタ、エアエレメント、燃料の交換と、かなりの部品を交換している。
また、インジェクションノズルはSS店にて点検済みで問題ないとのこと。
ジーゼル車の場合、ここまで交換すれば大体よくなるはずだか、全く変わらないという。
とりあえずスキャンツールで点検。
DTCコードの検出はなかった。
データモニタで各信号を調べると、「進角角度差」が10°CAというのが気になるが、それ以外には特に異常と思える項目はなかった。
「進角角度差」が10°CAということと、回転が上がらない時にはそんなにジーゼルノックもなく黒煙も出ないことから、噴射タイミングが遅いことが原因ではないかと思われた。
試しに、噴射タイミングを制御しているTCV(タイミング・コントロ-ル・バルブ)のコネクタを抜いてみた。
(コネクタを抜くと最大進角になる車が多い。)
その状態でレーシングすると吹き上がることが出来た。
もちろん進角し過ぎでジーゼルノックも黒煙もひどい。
これで噴射タイミングが遅いことが原因と推定された。
噴射タイミングを制御しているTCVの駆動波形をオシロスコープで調べると、不思議な波形が現れた。
配線図等がないので回路がどうなっているのかわからないが、デンソー製の噴射ポンプでありTCVは2本線。
端子電圧を調べた限りでは、TCVは単純に24V電源のアース側をECUがデューティ制御するタイプのようだった。
それなのに、アイドル時、アース側の波形は3V-0.4Vで波形である。
おまけにアイドリング時なのに、ON(ほぼ0V)の割合が少ない。
回転を上げるとこのON状態はほぼなくなり3V一定となった。
このTCVの回路であれば、TCVはON(ほぼ0V)の割合が多いほど遅角し、ONの割合が少ないほど進角する。
よって、通常であればアイドリング時なのでONの割合が多い波形にならないといけない。
それから考えると、この波形はアイドリング時なのにほぼMAX進角の割合である。
また、データーモニタの進角角度差が10°CAと噴射時期が遅れているということと、コネクタを抜いて進角させると調子よくなることからも、実際の噴射時期が遅いというのは間違いない。
ということは、実際の噴射時期が遅いので、ECUは進角させようとし、制御信号が進角状態の波形になっているのであろうか?
もし、そうであれば噴射時期の狂いはバルブタイミングが狂っているのか?!?!(インジェクションポンプの可能性もある)
いやいや、違う。
その前に、この波形には決定的におかしいところがある。
それの原因を見つけるのが先である。
つづく