エンジン始動不能の平成13年式キャリー(DB52T、F6A)が同業者から持ち込まれた。
話を聞くと、ダイアグは正常コード、火花点検、インジェクタの作動点検、燃圧点検、圧縮圧力などの基本点検の結果は全て問題なく、バルブタイミングまで調べたが原因が分からないという。
ちなみにクラセンやエンジンECUは交換したという。
念のため、バルブタイミングを除く全ての項目を再度確認したが、依頼者の言うとおり問題なかった。
ただ、クランキング時の回り方が、どうもタイミングが合っていない感じの回り方なので、点検していないバルブタイミングを点検。
クランクプーリーで1番の圧縮上死点を出し、カムのマークを見ると確かに合っていた。
これでかからないとなると、排気系の詰りか燃料自体の不良である。
しかし、カムの向きをよく見ると、どう見ても1番の圧縮上死点とはちょっと違うような気がした。
クランクを1回転させて、オーバーラップしにしてみた。
オーバーラップの方が正確にわかるからである。
すると、本来、排気終わりの吸気始めじゃないといけないのに、まだまだ排気は終わらないし、吸入に至っては全く始まっていない。
明らかに遅れているのである。
プーリーのマークが合っているのに、実際のカムの向きが合っていないことになる。
これは、クランクまたはカムのプーリーとシャフトのずれとしか思えない。
カムプーリーを外すと、原因が判明。
なんと、位置決めのピンが切断されていた。
こんなしょぼいピンを使っているの?
いくらしょぼくても、このピンが切れるという事はかなりの力がかかったはずだと思い、カムシャフトベアリングを外してみると、ヘッド先端部のベアリングキャップ内側にだいぶかじられた形跡があった。
オイル管理不良によるものと思われた。
焼き付き気味により、カムプーリーの位置決めのピンがきれ、プーリーとカムシャフトの位相がずれたのである。
最低でもシリンダヘッド交換が必要であり、場合によってはエンジンの載せ替えである。
以後の処置は依頼者に任せることにした。