燃料系やエンジン本体に疑わしいところがないので点火系の点検を行った。
しかし、10mmのギャップを作り、火花点検を行ったが火花は飛んでいた。
ただ、これで点火系は良いといえるのか?
やはりこれだけでは不十分である。
この点検方法はあくまでもコイルを外している状態で点検しているので、コイルからリークしているかどうかの確認は取れない。
コイルやプラグからのリークは目視で分かることが多いが、ダイレクトIGコイルの場合、ゴムで隠れた箇所からのリークは分かりずらいものである。
リークしているかどうかを確認するには、火花点検をしながら、片方をアースした配線の反対側を、コイル近くに這わせる必要がある。(燃料が出ているので、インジェクタのコネクタは抜いておく。)
エンジン回転中であれば簡単に出来るが、始動不能の車では、リークを調べている間、ずっとクランキングをしていなければならない。
丁寧に点検するには1本のプラグで20~30秒くらいは必要である。
それを3気筒分するのはバッテリにとって良くない。
そこで、前回紹介した、点火指示信号を連続で出せるテスタが活躍する。
通常、どこのメーカーのダイレクトIGコイルも3本線が基本である。
その3本とは、電源(12V)、アース、点火指示信号線である。
そして、点火指示信号は大体ピークが3~5Vの矩形波である。
前回紹介した自作品は(実際は他の人の作品)、その矩形波を連続で出せるものである。
また、端子位置は車種によっても違うがファイネスで確認が出来る。
なお、トヨタやダイハツのように4本端子もあるは、火花を飛ばすには残る1本は関係ないので接続する必要はない。
端子位置を調べ、火花を飛ばすことにした。
自作品のテスタの電源・アースをバッテリに接続し、テスタから出ているIGコイル用の電源・アース・点火指示信号端子を接続。
そして、プラグの接地部とテスタのアースを接続。
テスタの右のスイッチはメーンスイッチ、左側の黒いスイッチを押すと点火指示信号が発生、中央のつまみは周波数を変えるもの。
動画の前半の数秒は、単純に火花を飛ばしただけ。
(最初に、指を指したところに火花が飛ぶ。)
なお、プラグの代わりにギャップを変えられる工具を使い10mmのギャップを作っている。
動画の後半(10数秒後から)は、リークテストをするために赤い配線の先端をIGコイル本体にはわしている。
するとリークが発生し、コイル先端に取り付けた工具に火花が飛ばなくなる。
(リークしているときとしていない時では音が違う。)
リーク部が分かりにくいので拡大。
※ このIGコイルは現車の物ではなく、今回、動画用のためにわざとリークするように穴を開けています。
前半だけを見れば10mmのギャップでも火花が飛んでおりIGコイルは問題ないとなるが、火花を飛ばしながら片方をアースした配線をコイルに近づけてみると見事にリークが発生。
このように火花点検は単純に火花が飛ぶかどうかを点検するだけではなく、リークの有無についての点検も必要である。
火花点検を行うときには、IGコイルを車体からかなり浮かした状態で行うことが多いので、ボデーへのリークは起こりにくいが、IGコイルをエンジンに取り付けた状態では、IGコイルとシリンダヘッドは近い距離にあるので、実際はリークしていることが多い。
全てのIGコイルを調べると、正常だったのは1本のみで、残る2本がリークしていた。
当初、原因は点火系ではなく燃料系かエンジン本体と思っていた。
点火系ではないと思った理由は、全てのシリンダで火花が飛ばなければ「かかりそうでかからない」なんて症状にはならないし、1気筒分だけ悪ければ不調ながらも始動出来るからである。
まさか2本が同時に悪くなるなんて考えなかったので点火系は疑わなかった。
ただ、2本同時に悪くなるなんてことはまずないので、実際は1気筒が悪い状態で乗っていて、続いてもう1気筒も悪くなったのではないかと思われる。
1気筒ミス気味でも平気で乗り続ける人も結構いるのである。