走行中にエンジンが吹き上がらなくなったり、エンストしたりすることがあるという平成12年式ワゴンR(GF-MC21S、K6A)
エンジンの調子が悪いときにはチェックランプが点灯したらしい。
依頼者の工場でダイアグノーシスを調べたのだが、正常コードだったらしく、いろいろと調べたがわからいとということで依頼された。
念のため、当社でもダイアグノーシスを調べたが依頼者がいうように正常コードだった。
チェックランプが点灯したのに正常コード?
となると、可能性は3つ。
1つは、ECU不良。
もう一つはアイドル回転が低すぎる場合である。
後は古い車だけであるが、そもそもメモリー機能がない車。
まさかこの年式でメモリー機能がないなんてことはないだろうとは思い、強制的に不具合を作ってメモリー機能があるかを確認したが、不具合コードを記憶していた。
メモリー機能はあったので、チェックランプが点灯したのはECU不良かアイドル回転が低すぎたことが考えられる。
不具合は発生しチェックランプが点灯した時、アイドル回転が低かったのではないかを聞いたが、ユーザーには確認していないという。
また、症状からはECU不良のトラブルとは思えなかったので、チェックランプ点灯の件は後回しにすることにした。
吹き上がらなくなるということとダイアグで正常コードだったということで、まずは燃圧とO2センサーをモニターすることにした。
しかし、試乗して回ったが不具合が発生しない。
症状が出なければ調べようがない。
こういったときは基本に戻り詳しい問診をするに限る。
しかし、依頼者に聞くがあまりはっきりした返事がない。
特に知りたかった、山道や登り坂で不具合がでるのではないかと聞いていたのだが、お客さんは市街地でも出たと言ってたみたいだという返事。
クランク角センサーの可能性もあると思っていたのだが、これでその可能性は低くなってしまった。
しかし、翌日、依頼者から電話があり、ユーザーと会ったので詳しく聞いたところ、エアコンを入れて登坂走行をすると不具合が出やすいということがわかったようである。(-.-)
となると、やはりクランク角センサーが怪しい。
車にインバータとオシロスコープをセットし、クランク角センサーとカム角センサーをモニターできるようにした。
1kmほど続く坂道をLレンジでガンガン走ると、登りついてから下りになったころ、なんかエンジンの反応が悪い。
メーターを見るとタコメーターが激しく上下し、チェックランプがチラチラと点灯。
ユーザーが言うような状態になったかと思うとエンスト。
下りだったのでそのまま惰力で走行し、邪魔にならないよう空き地に入っていった。
すぐに再始動できたが、レーシングすると不具合はすぐに再現。
オシロの波形を見ると、クランク角センサーの幅が狭くなり、一部欠落していた。
クランク角センサーの不良である。
スズキでは定番のトラブルであり珍しくもないが、今回のトラブルは、問診によって故障原因の推定ができ、問診により不具合現象を再現させることができた事例であり、結果、不具合原因を発見することができたのである。
故障診断の基本である、問診や現象確認がいかに大切であるかということを示した事例である。